子供たちと遊んだビー玉を机に広げながら、「きらきらばい!」と風太は笑う。
「赤色、青色、黄色、紫色、緑色、白、透明……どれもよか色たい!」
「子供か?いや、子供か…」
「多分、近所の子供たちも風太と大和は同じ年だと思われてるよな…」
「確かに」
うんうん頷く岬とあおいの言葉など余所に大和と一緒に風太は楽しそうにけたけたと何が楽しいのか話している。
その無邪気な笑顔を見れるだけで絋平は今日がとても良い日だったと心底思う。
ひょっこりとレックスが話に混じろうとするかのように定位置に座る。
そんなレックスと目が合い、風太は目を輝かせる。
「レックスは緑色でかっこよかね~」
「緑色は格好良いのか?」
いつものように大和の頭の上にいるレックスを見ながらにこにこと風太がいう。
「緑色は一番かっこよか色ばい!」
「そうなのか…?オレは白色のほうが格好良いと思うが……」
「ああ、白も綺麗でやっちゃかっこよかね!」
「なんだそれ…」
「意味わかんねぇ…」
はぁとため息を吐くあおいと岬に対して、付き合いの長い絋平は知っている。
まだあおいに会う前、風太が緑色のクレヨンばかり使っていた時期があったのを。
『ふーた、みどりいろ、やっちゃすき』
ニコニコと笑う風太に朔太郎が嬉しそうに抱きしめていたものだ。
なんで緑色が好きなのか聞くと、頬を赤らめて、「ないしょばい!」と言ってた。
はじめて風太に内緒にされたらしく、朔太郎はショックを受けていたが。
「そういえば、風太の衣装も緑色が入ってるな」
「そうたい!黄色と緑色でやっちゃかっこよかやろ!」
「風太は本当に緑色が好きなんだな、…はっ、岬の色だからか?」
「岬、出会った頃はまだ緑じゃなかよ!」
「そうなのか…」
「というか、大和って岬イコール緑って思ってたの…?」
「ああ、春菊の色だな」
「ぷっ」
「ちょっとまてよ、他に例えがあるだろうが、他にも!」
「あおいはピンク色だな、桜色で誕生日の時期とも合ってて似合ってる」
「え、なんかいきなり普通の褒め方されると照れるな…」
「なんで、あおいは桜でオレは春菊なんだよ!」
「レックスの大好物だ、上手いか?」
その言葉にむしろイグアナなのにどう空気を読めばいいのか困ってるレックス。
そんな四人の様子を見ながら絋平はこいつら四人可愛いなぁと頬が緩む。
「ふーた、みどりいろ、やっちゃすき」
みどりいろがいっちゃんすき。
だって、こーにいちゃんのおめめのいろだから。
いっつもキラキラしてて、にいちゃんとおはなししながらおんがく、ひいてるともっときらきら!
おれも、にいちゃんとこーにいちゃんみたいにじょうずにひきたいな。
「こーにいちゃんはなんのいろがすきと?」
「おれか?おれは、あおいろだな」
あお!あおいろは、ふーたのおめめのいろ!
にいちゃんがすきないろ!いっしょ!
「ふーたのおめめのいろ?」
「そうだな、青空みたいで風太の目は綺麗だもんな」
ふーたのおめめきれいっていってくれた、やっちゃうれしい!
「ふーたもあおいろすき、あとね、きいろとあか!にいちゃんのいろ!」
「朔太郎の…?」
「さっくす、きらきら!」
「ああ、確かに」
そう言って笑うこーにいちゃんのおめめ、やっぱりきらきら!
みどりいろ、やっちゃすき。
だいすきないろ!
だって、
みどりいろはこーにいちゃんの『いろ』だから。
かっこよくて、いつもきれいないろ!
きっと、ずっと――――
「緑色は一番かっこよか色ばい!」
だいすきな色。
「やけん、青も、赤も、ピンクも、紫も、黄色も、やっちゃ大好きな色やけん!」
バラバラに弾け飛んだビー玉の色。
ゆっくりと反射が変わって、溶け合ったなら、フウライの―――『風神RIZING』の色ととなって音になる。
そしたら、遠い昔、たわいない話をしていた誰かのところまで届くと信じてる。