「むぅ~~~~」
「えい、えい!」
「こら、さっきから、なんで人の手を握ってるんだ風太……」
「だって絋兄ちゃん、大和の指輪受け取ったたい…」
「は?」
「プロポーズばい!」
そう言って頬を膨らませる風太に絋平は「ああ、あのゲームのことか…」と理解する。
「あのな、あれはゲームで…」
「だから、こうやって、絋兄ちゃんの手、ぎゅーーーーーっとして逃がさんようにするしかなかと!」
そう言って、にこーと笑う風太に絋平もつい微笑む。
猫と犬がいると嬉しくて、岩崎本舗の角煮まんじゅうが大好きで、そんな風太が仲良い大和に嫉妬してるだなんて思うとちょっとだけ顔がにやけてしまう。
「あれはゲームだろ?」
「ゲームでも本気やけん!」
むぅと頬を膨らませて、コロコロと風太は表情を変える。
「大和はイケメンやし、絋兄ちゃんの好みの顔じゃないかもしれんけど、俺は本気やったばい……」
「風太…」
あのゲームでは絋平と岬、あおいが親で終わったが、もしも風太が親の番があったなら、そしたら風太は笑って絋平の指輪をとってくれたのだろうか。
もしかすると風太も大和の指輪をとったのかもしれないけれど、そう思うと大人げなく少しだけ胸が痛む。
「だから、こうやって絋兄ちゃんのことぎゅーーーーーっと離れないでくっついていると!」
「ああ、もう解った、解ったから」
そう言って風太は絋平の背中にぎゅっと力いっぱい近づく。
「それなら、せめて前からにしてくれ」
「前から?」
「ほら、こっち」
そう言うと、風太は顔をキラキラさせて、それから背中から離れて、嬉しそうに前からぎゅーっと抱きつく。
「へへ、これで、絋兄ちゃんは俺のパートナーたいね!」
「あぁ、そうだな」
「ふふ」
そんなことで嬉しそうに笑う風太が可愛くて自分も同じように抱きしめてやる。
するとお日様の匂いがする。
いつかきっと。
自分に自信が持てたら。
ずっと、風太の隣にいてもいいのだと思える日がきたら、そしたらこんなゲームじゃなくて、こんな玩具じゃなくて、
キラキラと、風太の笑顔に負けないくらい綺麗で輝かしい宝石のついた指輪を渡そう。
そして、
風太に心の底からプロポーズを伝えよう。
そしたら、この愛しい子は、笑って受け取ってその薬指に嵌めてくれるだろうか。
そんな未来がいつか来る事を願って、思い切り抱きしめてやる。
「くるしかよ、絋兄ちゃん!」
そう嬉しそうな声に、答えるようにまた絋平は抱きしめた。